あなたは嘘をついたことがありますか?
おそらく誰しもが一度は嘘をついた経験くらいあるかと思います。
しかし、ここで紹介する「虚言癖」は、意味のない嘘を何度も繰り返して日常生活に何らかの支障がきたしているような状態を指しています。
どちらかと言えば依存症とよく似た側面を持ちます。
ただし、虚言癖が精神疾患であるという医学的定義がないというのが現状です。
そこで、こちらのコラムでは虚言癖に関連する精神疾患を中心に紹介し、虚言癖に潜む心の病気のリスクを知っていただきたいと思います。
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虚言癖とは
虚言癖とは、嘘をつくことで精神的な安定を得ようとして、意味のない嘘を日常的に重ねてしまう状態の人のことを表す言葉です。
症状が重くなることによって、嘘と本当の区別が曖昧になってしまったり、人間関係を保つことが困難になってしまったりと社会生活に深刻な問題が生じることがあります。
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嘘をつく5つの心理
嘘をつく心理には様々なものがあると思いますが、ここでは代表的なものを5つ以下のように紹介したいと思います。
- 嘘をつく心理1:褒められたい
- 嘘をつく心理2:かまって欲しい
- 嘘をつく心理3:負けたくない
- 嘘をつく心理4:自信がない
- 嘘をつく心理5:責任を負いたくない
虚をつく心理1:褒められたい
承認欲求が満たされていない人に多い思考です。
承認欲求とは誰かから認められたいという欲求のことです。
このような人に当てはまる事は、普段の生活において、周囲の人から褒められることが少なく、自分に自信を持てていない傾向があります。
例えば、SNSを使って誇張アピールをしているケースはこの項目に該当します。
嘘をつく心理2:相手をして欲しい
嘘をつく心理には、孤独感も影響しています。
誰かに振り向いてもらいたくて、相手が興味を持ってくれるような嘘をつきます。
このような場合、家庭や職場に居場所を失ってしまっている可能性があります。
嘘をつく心理3:負けたくない
こちらはプライドが高い人に多いケースです。
自分よりも優れている人物の話になると、その相手に張り合って自分のことを誇張して話してしまいます。
嘘をつく心理4:自信がない
嘘をつく心理1でもお伝えしましたが、嘘をつくことが自信のなさの現れでもあることがあります。
自信がないために、却って自分を大きく見せようとして嘘をついてしまうのです。
嘘をつく心理5:責任を負いたくない
嘘をつくことによって自分を守ろうという心理が働いている場合もあります。
他人から責められたり、非難されると、ありもしないことをでっちあげたり、嘘をついて他人に責任を転嫁してしまうことがあります。
嘘つきは心の病気!?虚言癖と関連性がある7つの精神疾患を紹介
虚言癖は単なる嘘つきではない場合があります。
中には、重い精神疾患が影響している場合もあり、安易に看過することができないものなのです。
こちらでは虚言癖に関連する精神疾患を2つのパターンに区分して紹介しています。
前者は「意識的に虚言を述べる精神疾患」、後者は無記憶状態で虚言を述べる精神疾患」です。
意識的に虚言を述べる精神疾患
虚偽性障害
何らかの病気がある状態を繰り返し装います。実際に病気がある場合は、その症状を大げさに説明したり、症状について嘘をついたりして、実際よりも病状や障害が重いふりをします。しかし、この病気は単なる不誠実では片付けられない複雑なものであり、重大な情緒的問題が関わる精神障害の一種です。
<MSD家庭版 “自ら負わせる作為症-心の健康問題-”. https://www.msdmanuals.com/ja-jp,(参照 2018-03-13)>
虚偽性障害の症状は、簡単に言うと「仮病」をしてしまうことです。
虚偽性障害者の心理的背景には、周囲の人たちから心配してもらいたい、優しくしてもらいたいという気持ちがあり、ついつい嘘をついて病人を演じるのです。
パーソナリティ障害
パーソナリティ障害の定義は、「その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験および行動の持続的パターンであり、ほかの精神障害に由来しないもの…」とされています。 (世界保健機構の精神疾患の診断基準(ICD-10)やアメリカ精神医学会の診断基準(DSM-IV-TR 2000)による)。
パーソナリティ障害にはいくつかのタイプがあり、アメリカ精神医学会の診断基準で10種、世界保健機構の診断基準で8種があげられています。アメリカ精神医学会の診断基準では大きく分けて、次の3つに分類されています。括弧内にそれぞれの特徴を記します。
・A群(奇妙で風変わりなタイプ)
妄想性パーソナリティ障害 (広範な不信感や猜疑心が特徴)
統合失調質パーソナリティ障害 (非社交的で他者への関心が乏しいことが特徴)
統合失調型パーソナリティ障害* (会話が風変わりで感情の幅が狭く、しばしば適切さを欠くことが特徴)
・B群 (感情的で移り気なタイプ)
境界性パーソナリティ障害 (感情や対人関係の不安定さ、衝動行為が特徴)
自己愛性パーソナリティ障害* (傲慢・尊大な態度を見せ自己評価に強くこだわるのが特徴)
反[非]社会性パーソナリティ障害 (反社会的で衝動的、向こうみずの行動が特徴)
演技性パーソナリティ障害 (他者の注目を集める派手な外見や演技的行動が特徴)
・C群 (不安で内向的であることが特徴)
依存性パーソナリティ障害 (他者への過度の依存、孤独に耐えられないことが特徴)
強迫性パーソナリティ障害 (融通性がなく、一定の秩序を保つことへの固執(こだわり)が特徴)
回避性[不安性]パーソナリティ障害 (自己にまつわる不安や緊張が生じやすいことが特徴)
<厚生労働省 “知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト”. http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_into.html,(参照 2018-03-13)>
つまり、一般の人と比較すると偏った考え方や行動パターンのために家庭生活や社会生活に影響が及ぶことです。
特に虚言癖と関連性の強いパーソナリティ障害は、B群の自己愛性パーソナリティ障害や演技性パーソナリティ障害でしょう。
例えば、自己愛性パーソナリティ障害では、ありのままの自分を愛することができず、自分は偉大な人物だということを思い込もうとするあまり、自分のことを誇張して周囲に話してしまいます。
ギャンブル依存症
ギャンブル依存症とは、衝動的なギャンブル欲が止められないために、実生活に様々な問題が生じているにもかかわらず、賭博行為(パチンコ、スロット、カジノ、競輪、競馬など)を繰り返してしまう精神疾患です。
ギャンブル依存症に限らず、依存症の多くに当てはまることですが、自分の行っている行為が家族や恋人などにバレると、やめさせられてしまうと思って、嘘をついて事実を隠してしまいます。
無記憶状態で虚言を述べる虚言癖ではない精神疾患
認知症
認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」をいいます。
つまり、後天的原因により生じる知能の障害である点で、知的障害(精神遅滞)とは異なるのです。<厚生労働省 “知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト”. http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_into.html,(参照 2018-03-13)>
認知症を発症すると、推理力や判断力の低下を伴います。
加えて、短期記憶にも障害が生じるため、記憶が曖昧だったり、明らかな矛盾や誤りが含まれる内容でも判断ができず、周囲にとっては嘘になる発言が増えてしまいます。
周囲は、あまりにも本人がきっぱりと発言したり、難しい言い回しを用いるために、認知症は判断がつかなくなるケースも珍しくはありません。
アルコール依存症
アルコール依存症をひとことでいうと、「大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも飲酒をはるかに優先させる状態」です。具体的には、飲酒のコントロールができない、離脱症状がみられる、健康問題等の原因が飲酒とわかっていながら断酒ができない、などの症状が認められます。<厚生労働省 “知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト”. http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_into.html,(参照 2018-03-13)>
アルコール依存症においても記憶に障害が生じることがあります。
これはアルコール依存症者に現れやすい症状の一つである栄養障害が関与しています。
栄養障害は、アルコール依存症による偏食により引き起こされ、特にビタミンB1が不足することにより、記憶障害を伴うウェルニッケ・コルサコフ症候群が発症するのです。
コルサコフ症候群になると、記憶を作為して整合性を持たせようとするため、周囲にとっては本人が嘘をついているように思うのです。
解離性障害
解離状態においては通常は体験されない知覚や行動が新たに出現することもあります。異常行動(とん走そのほか)や、新たな人格の形成(多重人格障害、シャーマニズムなど)は代表的な例です。これらの解離現象は、軽くて一時的なものであれば、健康な人に現れることもあります。
こうした症状が深刻で、日常の生活に支障をきたすような状態を解離性障害といいます。
<厚生労働省 “知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト”. http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_into.html,(参照 2018-03-13)>
解離性障害とは、「自分」という感覚が失われて、一定期間の記憶が損なわれてしまう状態を表す言葉です。
例えば、日常生活の中で、無意識のうちにボーとしてしまって気づいた時には自分が何をしていたのか、なぜここにいるのかわからなくなってしまったというような経験をしたことはありませんか?
このような状態が頻繁に起こり、程度がひどい場合には解離性障害の可能性があります。
また、このような無記憶な状態のときに、別の人格が現れる多重人格障害を伴うこともあります。
統合失調症
統合失調症は、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患です。それに伴って、人々と交流しながら家庭や社会で生活を営む機能が障害を受け(生活の障害)、「感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」ことを自分で振り返って考えることが難しくなりやすい(病識の障害)、という特徴を併せもっています。
<厚生労働省 “知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト”. http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_into.html,(参照 2018-03-13)>
統合失調症は、幻覚や妄想をあたかも現実で起きている出来事のように受け入れてしまう症状を伴うために、明らかに間違っている事実を真実であるかのように他人に伝えることがあります。
本人にとっては、真実であると信じ切っていますが、周囲の人からすれば「嘘」ということになります。
しかし、これは意識的な嘘とは言えないので、虚言癖ではありません。
虚言癖が及ぼす生活への影響
明らかな記憶障害を伴う場合や、相手を不快にさせないためのホワイト・ライ(悪意のない嘘)は許されることがあっても、本人の虚栄心を満たすためであったり、利益目的がある場合の嘘は受け入れられるものではありません。
こちらでは、作為的な嘘を繰り返した場合のデメリットについて3つ紹介したいと思います。
信頼を失う
やはり、嘘を繰り返すことによる一番大きな問題は、他人からの信頼を失ってしまうことでしょう。
一度失ってしまった信頼はなかなか取り戻すことはできません。
信頼を失うと、あなたの仕事・家庭生活・交友関係すべてにおいて支障をきたします。
自己肯定感の低下
自己肯定感とは、つまりあなたの自信のことです。
虚言癖の原因のところでもお話ししましたが、嘘をつく心理的背景には本人の自信のなさが影響している場合があります。
しかし、嘘を重ねると現実と嘘の自分がますます乖離して、さらに自信を失ってしまう結果につながります。
存在意義を見失う
嘘を重ねることで、本来の自分が一体何者で、どういうことがしたいのかわからなくなってしまいます。
その時々の状況によって、自己利益のために嘘の発言をしていると、自分の考えがコロコロと変わり、自分の考えに矛盾が生じ、本当に自分が大切にしている考え方や想いがブレるようになるのです。
虚言癖の克服方法
こちらでは虚言癖を克服するための具体的な方法について紹介しています。
取り組み内容は以下の5つです。順を追って説明していきます。
- 虚言癖の克服方法1:嘘をついていることを自覚する
- 虚言癖の克服方法2:信頼できる人に相談し、協力者をつくる
- 虚言癖の克服方法3:嘘をついてしまう原因を見直す
- 虚言癖の克服方法4:3で突き止めた原因を解決するために小さな行動から始める
- 虚言癖の克服方法5:小さな成功を積み重ねて自信を持つ
虚言癖の克服方法1:嘘をついていることを自覚する
まずは自分に虚言癖があることを自覚することが克服への第一歩です。
このコラムを読んで、もしかしたら自分かもしれないと思った方は克服への第一歩を踏み出したことになります。
自覚できるということは克服できる可能性はかなりありますので、安心してください。
虚言癖の克服方法2:信頼できる人に相談し、協力者をつくる
あなたの周囲には心から信頼できて、何でも相談できる人はいるでしょうか?
おそらく、嘘を重ねているために、あまり交友関係に恵まれていないのでは?
それに、嘘を繰り返すことで、ますます自信を失って、気分がすっかり落ち込んでいるかもしれませんね。
でも、このまま一人で悩んでいても、誤った思い込みやネガティブ思考にとらわれていて、ますます泥沼にはまり込んでしまう危険があります。
もし、社会にあなたの居場所がなく、孤独を感じているのなら、まずは一人でもいいので信頼できる協力者を作りましょう。
あなたにはおそらく居場所が必要です。
あなたの素の状態を受け入れてくれるような居心地の良い居場所です。
一番良いのは居場所はあなたの家族や友人です。
しかし、家族関係があまりよくなかったり、これまであまり社交的ではなかった分、友人を作ることが高いハードルと感じるかもしれません。
そのような場合は、カウンセラーを頼ってみてください。
きっとあなたの話に耳を傾けて、一緒に克服に向けて闘ってくれるはずです。
整形依存症の克服方法3:嘘をついてしまう原因を見直す
あなたはどうして嘘を繰り返すようになったのでしょうか?
あなたの背景にある問題は何ですか?
まずは依存症の問題行動に目を向けるのではなく、その背景にある原因に焦点を当てることが克服のカギになります。
なぜなら、虚言癖の原因があなたの思考になって、「嘘をつく」という行動になって表れているからです。
例えば、幼少期に親の愛情を受けずに孤独な環境で育ってきた例で説明します。
このような環境下で育つと、他人に関わってほしいと思い、周りの目を引こうとすることがあります。
その時に、相手の関心を引くような嘘をついてしまう傾向があるとします。
この場合、あなたの協力者に辛かったことをすっかり全部吐き出してみましょう。
そして、過去の自分をしっかりと受け入れてあげるのです。
そのためにも、あなたが信頼できて、あなたのことをしっかりと受け入れてくれる協力者を見つけることは必ず行いましょう。
虚言癖の克服方法4:嘘をやめるために小さな行動から始める
自分の過去を受け入れることができれば、今のあなたも受け入れられるようになります。
そして、「私は私のままでいいんだ」と思えた時こそ、嘘をやめるために小さな行動を始めるベストタイミングです。
思考が変われば、日々の行動は変えられるのです。
しかし、初めからいきなり大きな目標を掲げてはいけません。
初めは少しの努力で達成できる簡単な目標を掲げましょう。
なぜなら、掲げた目標を達成できないと「やっぱりだめだった」とあきらめてしまって、また元に戻ってしまう危険性があるからです。
初めの目標は、例えば、自分が素でいられる友人を作る、1日の中で思ったことを毎日日記につけるなどがよいでしょう。
とにかく、嘘をつくという問題行動を治すことに執着しすぎず、自分がこれだったら絶対に達成できるという目標を立ててください。
そして、焦らずに少しずつ実行に移してみてください。
虚言癖の克服方法5: 小さな成功を積み重ねて自信を持つ
いかがでしょうか?
あなたが立てた目標は順調にクリアできそうですか?
目標達成の経験をいくつも積むことができれば、だんだんと自信がついてくることでしょう。
心が前向きに変化している中で、変化していく自分の様子をぜひ誰かと共有してください。
この誰かはもちろんあなたが信頼できて、あなたのことをよく理解してくれている人です。
あなたと喜びを分かち合ってくれる人が最適です。
どうしても克服できない場合
紹介された方法を試したがどうにもうまくいかない。
協力者が見つからないという場合には、カウンセラーや心理士といった専門家の力を借りてみてください。
専門的な知識を用いて、あなたが自分でも気づいてなかった深層心理や過去のトラウマなどを浮き彫りにしてくれることが期待できます。
克服に向けてしっかりとサポートしてくれることでしょう。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
虚言癖には様々な心理的背景があり、中には深刻な精神疾患を患っているケースもありましたね。
あなたがもし一人で悩んで虚言癖をそのままにしてしまうと、虚言癖の背景にある問題がどういうものかわからないままになってしまいます。
ひょっとすると深刻な心の病気が潜んでいるかもしれません。
あなたが嘘をついてしまう理由はどのようなものでしたか?
辛いことかもしれませんが、過去の自分と向き合って、誰かに話してみることは心の整理をするためにとても大切なことです。
今一度自分の嘘についてしっかりと考え直し、周囲の方としっかり連携をとって克服を試みることが解決への近道になるのです。
では、最後にこのコラムでお伝えした克服方法についておさらいをしておきます。
- 虚言癖の克服方法1:嘘をついていることを自覚する
- 虚言癖の克服方法2:信頼できる人に相談し、協力者をつくる
- 虚言癖の克服方法3:嘘をついてしまう原因を見直す
- 虚言癖の克服方法4:3で突き止めた原因を解決するために小さな行動から始める
- 虚言癖の克服方法5:小さな成功を積み重ねて自信を持つ
以上の5つが克服方法として紹介したものです。
克服へ向けて頑張ってください!