「人混みが苦手なんですけどなんか方法ないですか」そういう相談を受けることはけっこう多い。人混みに行くと疲れる。人混みに行って帰ってくるとどっと疲れが押し寄せてくる。そのような悩みだ。
ぼくも昔は人混みが大の苦手だった。渋谷や新宿の街を歩くだけで、呼吸がしにくくなったり、ライブを観に行くと途中で苦しくなって帰ったりしていた。満員電車なんて乗っていられたものではなく、ものすごく我慢して乗っていた。
それが今はだいぶマシになった。どうして人混みって疲れるのか。人混みって普通の場所と何が違うのか?と自分で考えるようになってから、その対処の方法が分かるようになってきた。
自分で手に入れた「人混み対処マニュアル」をここに書く。
目次
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人混みってどんな場所
まず人混みってどんな場所のことだろう。電車、駅、都会の街、美術館、ライブ会場、スタジアム、狭めのカフェ、意外とスーパーマーケットも人が多いことがある。
人混みの特殊性
そういった場所は、他の場所となにが違うのだろう。『人混み』は何が特殊なのだろう。あたりまえのことだけれど、人が多い。それに人が過剰に密集している。人が近い。
人があまりに密集していて、人と人の距離が近いことが、人に何か悪影響を与えているに違いない。
人混みから受ける影響
人混みが苦手な人の多くは、人混みに行くと疲れると言う。ぼくもそうだった。息苦しかったり、頭痛がしたり、目が回ったようになったりする。酔っているような感じがする人もいるようだ。
人混みに行って毎回そんな感じがしたら、苦手になっておかしくない。
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人混みはなぜ疲れるのか
それではなぜ「人が密集している状況」はなぜ人を疲れさせるのだろう?人混みが人を疲れさせる要素は3つある。意識/呼吸/緊張の3つだ。1つずつ詳しくみていこう。
意識
脳にあるミラーニューロンという細胞を知っているだろうか。ミラーニューロンは、他者の行動を真似ようとする細胞で、目の前の人が右手をあげたら自分も右手をあげたくなったり、目の前の人が笑ったら自分も笑いたくなったり、そういった協調や模倣をうながす細胞だ。共感する前提となる細胞だと言われている。
ぼくはこのミラーニューロンが、人混みで人を疲れさせる一番の原因ではないかと考えている。
ミラーニューロンは、おそらくある近さの人を模倣するようにプログラムされている。近くにいる人が1人であれば、その1人の動きだけ模倣しようとすればいい。
ただそれが十数人いる場合はどうか。ぼくは、そのときミラーニューロンは混乱するのではないかと思う。これが「人混み」が人を酔ったような状態にする原因ではないか。
無意識に人は、人を模倣したり、人に共感するようにできている。しかし近くにいる人が多すぎると、意識がどこに焦点をあてればいいのかわからず、宙をさまよったような感じになってしまう。意識の焦点が自分の外をさまようことで酔った感じになる。
呼吸
息苦しくなる原因の1つは、物理的に酸素濃度がひくくなることがある。あたりまえのことかもしれないけれど、同じ場所に2人しかいないのと、50人いるのとでは1人に与えられる酸素の量は変わってしまう。
特に換気に配慮されていない場所ではそうなることが多い。閉め切った部屋とか空気の通りの悪い場所などだ。
感覚が鋭い人ほど、そのような細かい変化に影響をうけやすい。
緊張
人には心地のよい距離感というのがある。心地よい距離感であればリラックスできる。リラックスというのは、身体的に無理な力が入っていないということだ。
人との距離感が縮まることで、その状態が崩れる。
あまりに人との距離が近いと、身体は無意識に警戒するのだ。そうなると、身体のいらない部分に力が入ってしまう。この緊張が呼吸を浅くしたり、頭痛を引き起こしたりする。
人混み対処マニュアル
それではどのようにしたらそれらの原因に対処できるのか書いていく。上のそれぞれの項目に対応した方法だ。
意識を内側にむける
人混みでは大量の人に無意識に影響されて、意識が外側に向きすぎてしまう。どれだけスマートフォンや本に集中しても、人混みが苦手であるような感覚の鋭い人の身体は、無意識に意識を外に向けている。
それをうまく家にいる時のような、せめてオフィスにいるくらいの意識の状態にしたい。
そのためにできることは、外から受けとった信号によって自分はどんな感じを受けているか?について観察してみることだ。
たとえば美術館で絵を見ているとする。「絵を見よう見よう」としてしまうと、意識が自分から離れて、外へと飛んでいってしまう。そうすると身体と意識のつながりが切れて、疲れやすい状態になる。呼吸が浅くなったり、簡単に周りの人からの影響を受けるようになったりする。
この絵はどんな絵か?という視点から、この絵を見て自分はどんな感覚を得ているか?という視点に変えてみる。
そうすると意識が身体(自分)の側に帰ってくる。これを人混みでもやってみるといい。周りに影響を受けるのはしかたがない。ただ、その「周り」に向いている意識を、自分の身体の感じの方へと、スイッチを切り替えるようにして変えてみるのだ。
そうしてみるだけで、人に酔う感じがすこしは解消されるだろう。
呼吸
酸素量については、まずは窓をあけてみることだ。当たり前のことだけれど、それを行動に移すのはけっこう億劫だったりする。酸素が足りない感じがしてくると、人は頭の方に血がのぼって、のぼせた感じになることが多い。もし換気ができる場所ならそれをしたり、してもらうのがまず最初だろう。
もしそれができないような場所だったらどうするか。呼吸を深くする簡単なワークをやるといい。
左手の親指のつけねあたり(だいたいでいい)に右手の手のひらをかるーく当ててみる。
しばらく手を当てながら呼吸に意識をむけてみる。そうしているとあくびがでてくるかもしれない。
あくびはとてもいい。あくびは身体をリラックスさせるための最も簡単で効果のある反応だ。身体の調子が悪いときは、わざとあくびをするのもいいと言われているぐらい、リラックスに効果がある。
アナウンサが両手を前で組んでいるのを見ることは多い。あの仕草は人を落ち着かせると言われている。親指の付け根の辺りに、呼吸を整えるツボがあるのだ。他にも肘の内側に手をあてても似た効果が得られる。
「手当て」については片山洋二郎さんの本をよく読ませていただいています。
身体の緊張
人は自分の状態に違和感があることや緊張していることには気づいても、なかなか身体の緊張には気づかない。
まずは、人混みにいるときの自分の身体の状態に意識を向けてみることだ。
家にいるときと、姿勢や身体の重心はどう違っているか。どこに力が入っているか。感じてみる。
1つずつ観察してみるのもいい。頭頂はどうだろう。力が入っていないだろうか。ひたいはどうか。耳のうしろは?目はどうだろう。あごはどうだろう。首は…肩は…みぞおちはどうだろうか。
そのようにゆっくりと自分を観察してみるといい。いつもよりはリラックスできることが感じられるかもしれない。リラックスできると、人は呼吸量が増える。それが人を楽にする。
感覚の鋭さと影響
人混みが苦手な人というのは、総じて感覚がするどい人が多い。繊細に物事の差異を感じられる人だ。細やかに感じられるからこそ、影響を受けやすい。
だからといってはなんだが、人混みが完璧に大丈夫になるのは難しいかもしれない。でもつらさを今の4分の1くらいにはできるはずだ。それには身体への意識が必要で、過剰な人混みというある種異常な状況のなかで、身体をリラックスさせる方法をつかんでいくことが重要になる。