「もう少しだけ熱心に働けば、また別の本を読んで、また別の(ヨガや瞑想などの)クラスに行けば、より幸せになれる。このように考えているとしたら、それ自体が間違っています」。ルース・フィップマン(Ruth Whippman)というイギリス人ジャーナリストのインタビュー記事です。
ヨガや瞑想などをすると、ストレスがとれる。精神的健康さらには身体的健康にもいい。また、運動にも同様の効果がある。ヨガ、瞑想、運動などは、幸福感と結びつけて語られることもあります。ヨガをすると、瞑想をすると、運動をすると幸福感が得られる。
たしかに科学的に実証されていることもありますし、その通りだと思います。一時期ヨガのクラスに通っていたことがありますが、終わった後は、意識が明晰になったような感じがして、今まで感じたことがないような幸福感がありました。初めての感覚でした。ヨガほどではないですが、水泳もほぼ同様です。おそらく意識を身体に集中するからではないでしょうか。でも、あくまで個人的経験ですが、これらの幸福感は長くは続きませんでした。個人的には数時間程度だったと思います。
そんなわけで、この記事をご紹介したいと思いました。本を読んだり、ヨガ・瞑想・運動などをするのも素晴らしいことだけれど、他により本質的なことがあるのではないか。そんな疑問に一つの答えを与えてくれる記事です。
目次
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アメリカでは、セルフヘルプ産業が盛んだが、幸福度は低い。
アメリカではセルフヘルプ産業が盛んで、その規模も1100億ドル(約10兆円)だとか。すごい規模ですね。マインドフルネス、ヨガ、瞑想といった分野についても、何兆円という規模だそうです。その理由の一つとして、アメリカでは、ポジティブ心理学がセルフヘルプ産業を学問的に支えていることが挙げられています。
しかし、ルース・フィップマンによると、アメリカ人はそれで幸せにはなっていないそうです。セルフヘルプ産業がそれほど盛んでない他の国々と比較しても、アメリカの幸福度は相当に低いといいます。
ヨガ、瞑想、運動等には、素晴らしい効果がある。しかし、より本質的なことは他にあるのでは・・。
その理由の一つとして、ある研究の結果が挙げられています。それによると、幸せを熱心に追い求め、幸せに価値をおいて熱心に取り組むと、かえって幸福度が下がるのだそうです。この結論は、セルフヘルプ産業の前提(たとえば、瞑想に熱心に取り組めば幸せになれる等)と矛盾しているといえそうです。
つまり、「もう少しだけ熱心に働けば、また別の本を読んで、また別の(ヨガや瞑想などの)クラスに行けば、より幸せになれる。このように考えているとしたら、それ自体が間違っている」というのです。
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幸福は、コミュニティや社会的つながりから得られもの。
また、セルフヘルプ産業の幸福についての考え方は、幸福について分かってきたことと少し違うのだそうです。セルフヘルプ産業は一般的に、自分の個人的な幸福、自分にフォーカスした幸福という側面から、幸福を捉えているといいます。つまり、どのようにして自分を向上させるか、どのようにしたら自分自身を向上させる努力がうまいいくか、という側面からとらえているのです。
でも実際には、幸福が見つかるのは、コミュニティや社会的つながり、他人を通じてだと分かってきました。なので、幸福になりたいのであれば、自分にフォーカスする(自分のことを考える)のは、ある意味、望むことと逆のことをしていることになるのだそうです。完全な存在であろうとすると、幸せであろうとすると、あるいは、自分の否定的な感情(怒り・悲しみなど)を否定すると、逆に、抗うつ剤の使用率が高くなるのだといいます。
でも、だからといって、幸福なんてどうでもいいということにはなりません。もちろん幸福であることは重要です。ただ、どんな幸せを、どのようにして見つけるのか。幸福自体を目標とするのか、それとも、人生を充実させ、意味のあるものとし、他者との関わりを築き、その副産物として幸福を手にするのか。それが大切だというのです。
幸福に関する研究結果は、ときに相反している。もっとも重要な要素は、コミュニティによる幸福。
ルース・フィップマンによると、幸福に関する研究は、相互矛盾する場合が多いといいます。自分の考え方・信念に合致する研究は、探せば見つかる。たとえば、男性は女性より幸福度が高い、あるいは逆に、女性は男性より幸福度が高いということを証明したければ、それを裏付ける研究結果は、いずれについても見つかるのだそうです。つまり、両立しない事実(どちらかが正しくて、どちらかが間違っている場合)でも、両方とも正しく見えてしまう。
しかし、ほとんどどんな研究でも、一貫している点があるそうです。それは、社会的関係性やコミュニティが、幸せにとってもっとも重要な要素だということ。このことは、内向的な人でも、外向的な人でも同様だそうです。
ソーシャルサポート(物質的・精神的支援)の効果
でも、幸福とは社会的つながりだ、コミュニティだといっても、「いつも誰かと外出してパーティに出かけ、社交性を高めないといけない」というのとは違うそうです。大切なのは、人間関係の深さなのだそうです。コミュニティにいて、物資的・精神的支援を受けていると感じられるかどうか。
そして、これは人によって違うのだそうです。誰かにとっては、たくさんのパーティに行くことかもしれないし、他の人にとっては、家族や親しい友人と緊密な人間関係を築くことかもしれません。ただ、あらゆる人にとってもっとも大きなことは、強いソーシャルサポート(物質的・精神的支援)の効果なのだそうです。
なので、今自分にある人間関係に投資して、その人(相手)に見合った時間、注意、エネルギーを注ぐこと。ルース・フィップマンによると、自分の幸福感を強めるためには、これが一番大切なのだそうです。
感想
以前ご紹介しましたが、アミット・スード博士によると、深い人間関係を築くためには、自分と道徳観・倫理感が似ている人を特定して、その人に優先的にエネルギーを注ぐのでした。ルース・フィップマンの意見の結論的な部分を読んで、このことを思い出しました。
自分の感じたこととしては、やはり可能な限りソーシャルサポート(物質的・精神的支援)を与えるように努めるということでしょうか。ちょっとした募金をしたり、バスで席を譲るといった小さなことです。ソーシャルサポートを他人から得ようというのは、ちょっと無理がありますよね(笑)。また、読書会や勉強会などを通じて、コミュニティを作ってみたいと思いました。ただ、その際は、あまり自己改善に力を入れない方がいいかもしれませんね(笑)。