仕事がたくさんある日を思い浮かべてください。同僚の一人があなたのオフィスにやってきて、仕事を手伝ってほしいといいます。その同僚は財務見通しの数字を理解しようとして、必死になっています。あなたは自分の仕事を後回しにして、同僚が公式や数字を整理するのを45分手伝いました。同僚は財務見通しを理解して、あなたのオフィスを後にしました。
このやり取りの後、あなたはどう感じるでしょうか。困っている同僚を助けて、幸せな感じがするでしょうか。仕事を中断したことで、自分の仕事に支障が出ることを懸念するでしょうか。同僚の問題解決に頭を使って疲れたと感じるでしょうか。
人助けに関する発表済みの研究の多くによれば、人を助けることで幸せになり、力が湧いてくると感じるそうです。
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同僚を助けると、消耗して自分の仕事ができなくなるかもしれない。
フロリダ大学ウォリントン経営大学院のクロディアナ・ラナジ(Klodiana Lanaj)助教授の研究によると、職場において助力のお願いに応えることは諸刃の剣だそうです。一方では、困っている同僚を助けると、自分も力が湧いてきて満たされます。特にその助けが同僚にとって有用だったと感じられたとき、別の言葉でいえば、助けが現実にプラスの影響をもたらしたときに、このことが当てはまります。他方、困っている同僚を助けると、助けた人の認知と情緒の能力が奪われ、疲労を感じ消耗して自分の仕事ができなくなるのです。
長距離レースで最初の数マイルを走ったときと同じように、助けを求める願いに一つか二つ応えたくらいであれば、特に助けた人のエネルギーがその日弱くなるということはありませんでした。しかし、フルマラソンを走る場合のように、助けを求める願いに数多く答えていると、だんだんとエネルギーが枯渇してきます。エネルギーが枯渇してくると、意志力、注意力が低下し、情緒のコントロール、困難な仕事を継続していくことが難しくなるのです。一日に何回も人の仕事を手伝うと、その日の夜休んでも、翌日まで疲労を持ち越してしまうといいます。
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手伝う人の戦略
同助教授らの研究では、次のことも分かったそうです。すなわち、人の仕事を手伝うことには、プラスの結果とマイナスの結果の両方が見られました。助けることにより、助けた人はポジティブな情動を感じます。すると、それが助けた人の活力、満足感、その日の仕事へのコミットメントを高めます。それと同時に、人の仕事を手伝うことで自分の仕事の進捗が阻害され、内的資源が枯渇し、仕事に対する満足感やコミットメントが低下しました。
こうした新しい発見を考慮した場合、助ける人と助けを求める人にとって重要なことは何でしょうか。まず、人の仕事を手伝うことには、プラスの効果だけでなく、マイナスの効果もあり、そのマイナス効果は何時間も何日も続くということです。人の仕事を手伝うことで消耗する効果は、満たされる効果よりも強かったのです。
第二に、人を手伝うことで消耗した日には、エネルギーを回復するために短期的な解決策をとることができます。研究によると、たとえば休憩したり、昼寝をしたり、カフェインを摂取したりすれば、消耗した人にとってこれらが短期的な解決策となるかもしれません。
第三に、助力を断ると社会的には非礼となるかもしれませんが、未来のより都合のよいときに手伝うと約束すれば、助ける人にとっては適切なことになります。可能なときには、一日や週の終わりに手伝ったり、自分の大切な仕事を終えた後に手伝うようにすれば、助力を与える人もよりよい仕事ができます。
助けを求める人の注意点
助けを求める人は、手伝うことのコストをいろいろな点で減らすことができます。まず第一に、助けを求める人は、仕事を手伝えば、手伝った人に有害な結果が生じうることを認識すべきです。そして、同じ人に一日に何回も助けを求めるべきではありません。
第二に、助けを求める人は、まずマニュアルやウェブサイトを見て解決策を自ら探すのがよいでしょう。そうすれば、自己効力感や学びが改善し、助けを与える人の時間や能力を守ることができます。
第三に、助けを求める人は、感謝を表現したり、手伝ってくれてどれほど助かったかを表現することで、助ける人のエネルギーを満たす効果を促進できます。「ありがとう」と言うことは当然のように見えますが、職場では他の場所と比べて感謝が表現されることが少ないそうです。感謝を表現すれば、助力した人の感情は満たされ、手伝ったことによる消耗も満たされるかもしれません。
まとめると、助けを与えることは、職場において非常に重要な行為であることは間違いありません。しかし、それにはコストが伴うことを頭に置いておくことが重要だそうです。
感想
助けてと言われたら、できるだけ手伝う。ただ、時間や回数を決めておいた方がいいかもしれないですね(笑)。